自動車販売会社による車庫証明の申請・自動車の登録等の手続における行政書士法違反になるものと考えられる例

青森県五所川原市の行政書士・海事代理士の原田拓です。

行政書士法の一部を改正する法律が令和7年6月13日に公布され、令和8年1月1日から施行されます。
この改正法により、行政書士法第19条第1項の業務の制限規定に「他人の依頼を受けいかなる名目によるかを問わず報酬を得て」の文言が加えられました。

改正後 第19条1項(令和8年1月1日施行)

(業務の制限)
第十九条 行政書士又は行政書士法人でない者は、他人の依頼を受けいかなる名目によるかを問わず報酬を得て、業として第一条の三に規定する業務を行うことができない。ただし、他の法律に別段の定めがある場合及び定型的かつ容易に行えるものとして総務省令で定める手続について、当該手続に関し相当の経験又は能力を有する者として総務省令で定める者が電磁的記録を作成する場合は、この限りでない。
(業務)
第一条の三 行政書士は、他人の依頼を受け報酬を得て、官公署に提出する書類(その作成に代えて電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によつては認識することができない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)を作成する場合における当該電磁的記録を含む。以下この条及び次条において同じ。)その他権利義務又は事実証明に関する書類(実地調査に基づく図面類を含む。)を作成することを業とする。

改正前 第19条1項

(業務の制限)
第十九条 行政書士又は行政書士法人でない者は、業として第一条の二に規定する業務を行うことができない。ただし、他の法律に別段の定めがある場合及び定型的かつ容易に行えるものとして総務省令で定める手続について、当該手続に関し相当の経験又は能力を有する者として総務省令で定める者が電磁的記録を作成する場合は、この限りでない。
(業務)
第一条の二 行政書士は、他人の依頼を受け報酬を得て、官公署に提出する書類(その作成に代えて電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によつては認識することができない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)を作成する場合における当該電磁的記録を含む。以下この条及び次条において同じ。)その他権利義務又は事実証明に関する書類(実地調査に基づく図面類を含む。)を作成することを業とする。
2 行政書士は、前項の書類の作成であつても、その業務を行うことが他の法律において制限されているものについては、業務を行うことができない。

この改正は、現行法が特に厳しくなったものではありません。これまで行政書士でない者が「会費」、「手数料」、「コンサルタント料」、「商品代金」といった名目で報酬を受け取っていた事例(特に新型コロナウイルスがまん延した際の持続化給付金の申請)が散見されたことから、どのような名目であっても、対価を受領し、業として官公署に提出する書類その他権利義務又は事実証明に関する書類、実地調査に基づく図面類を作成することは、法第19条第1項に違反することが明確化されたにすぎず、現行法と変わっていません。

しかし、罰則規定は厳しくなり、改正法により法第23条の3の両罰規定に、行政書士又は行政書士法人でない者による法第19条第1項の業務の制限違反に対する罰則が加えられ、違反行為者が罰せられる(一年以下の拘禁刑又は百万円以下の罰金)ことはもとより、その者が所属する法人に対しても百万円以下の罰金刑が科せられることとされました。行政書士法違反により刑罰を受けることとなれば、コンプライアンス違反による信用失墜ばかりか、顧客離れにつながるなど、企業経営に計り知れない悪影響を与えることになります。

改正後 第23条の3

第二十三条の三 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、第二十一条の二、第二十二条の四、第二十三条第二項又は前条の違反行為をしたときは、その行為者を罰するほか、その法人又は人に対して各本条の罰金刑を科する。

第二十一条の二 第十九条第一項の規定に違反したときは、その違反行為をした者は、一年以下の拘禁刑又は百万円以下の罰金に処する。

これまでも、販売した車の車庫証明の申請書作成・自動車の登録等の申請書作成を、自動車販売会社が行っていたこともあると思います。
今回の行政書士法改正に伴い、車庫証明の申請・自動車の登録等の手続における行政書士法第19条第1項違反と考えられる事例を日本行政書士会連合会がまとめましたので、周知させていただきます。なお、主な行政書士法違反となるものと考えられる例を記載しており、記載されていないことが行政書士法違反にならないわけではありません。
また、国土交通省回答の行政書士法違反となる事例も載せましたので、ご確認ください。

行政書士法改正についてはこちらのページにまとめています。

目次

車庫証明書の申請業務において行政書士法違反と考えられる例

① 自動車販売会社の販売員が、自社が販売した車両に係る車庫証明申請書の作成を代行すると、例え、作成費用を無料としても、車両の販売代金や整備代金等に報酬が含まれていると考えられることから行政書士法違反となるものと考えられる。


② 自動車販売会社の販売員が、自社が販売した車両に係る車庫証明申請書を作成するため自社の顧客情報や車両情報等のデータベースの情報を用いると、①と同じ理由により行政書士法違反となるものと考えられる。


③ 自動車販売会社の販売員が、自社が販売した車両に係る車庫証明申請書及び添付書類を警察署に提出した後に、車台番号の追記や記載内容の訂正・補正を行うと行政書士法違反となるものと考えられる。仮に、警察署の署員等から記載内容の訂正・補正を求められた場合であっても、これを行うと行政書士法違反となるものと考えられる。

自動車の登録業務において行政書士法違反と考えられる例

① 自動車販売会社の販売員が、自社が販売した車両に係る自動車登録申請書の作成を代行すると、例え、作成費用を無料としても、車両の販売代金や整備代金等に報酬が含まれていると考えられることから行政書士法違反となるものと考えられる。

② 自動車販売会社の販売員が、自社が販売した車両に係る自動車登録申請書を作成するため、自社の顧客情報や車両情報等のデータベースの情報を用いると、①と同じ理由により行政書士法違反となるものと考えられる。

③ 自動車販売会社の販売員が、自社が販売した車両に係る自動車登録申請書及び添付書類を運輸支局等に提出した後に、追記や記載内容の訂正・補正を行うと行政書士法違反となるものと考えられる。仮に、運輸支局等の職員から記載内容の訂正・補正を求められた場合であっても、これを行うと行政書士法違反となるものと考えられる。

国土交通省回答の行政書士法違反となる事例

国土交通省のHP(https://www.mlit.go.jp/jidosha/jidosha_tk6_000001.html)に行政書士法違反となる事例が掲載されていますので、紹介します。

【会員から徴収する会費について「報酬」への該当性】

【質問1;行政書士でない者が、会員から会費を徴収して会員のために書類の作成等を行う行為】
〇 行政書士でない者(甲)が会員(自動車所有者)から会費を徴収し、会員が交通事故を起こした場合に、会員からの依頼を受け、①及び②の行為を実施。
① 警察に提出する交通事故証明願の作成
② 保険会社に提出する自動車損害賠償責任保険請求書の作成

〇 会員が事故を何回おこしても、全く事故をおこさなくても、会費の追加又は返還はせず、会費は全て甲の収入。 〇 甲は、もっぱら上記①及び②の業務を行う。

〇 この場合、甲の行為は、行政書士法第 1 条の3第 1 項に規定する「報酬を得て」の報酬に該当するか。

【回答】
〇 上記①及び②を行うことは、行政書士法第 1 条の3第1 項に規定する「官公署に提出する書類その他権利義務又は事実証明に関する書類(実地調査に基づく図面類を含む。)を作成することを業とする。」に該当。
〇 この会費は、行政書士法第1条の3第1項に規定する「報酬を得て」の報酬に該当する。

【正当業務の遂行上真に必要な範囲内において付随して行う「付随行為」への該当性】

【質問2;自動車販売とあわせて実施する登録申請書等の作成行為】
〇 行政書士法第19条第1項の解釈について、「行政書士でない者が、正当業務の遂行上真に必要な範囲内において付随して行う場合は、従来どおり禁止されるものではない」としているが、

〇 自動車販売会社(A)が、その販売に係る自動車に関し、道路運送車両法に基づく登録を行うについて、顧客の依頼を受け、販売従業員(甲)をして登録申請書の作成、添付書類の収集及び提出等の代行をさせることは、自動車の販売に付随する真に必要な範囲の行為として行政書士法第 19 条第1項に抵触しないと解されるのか。

〇 また、車庫証明は、自動車の保管場所の確保等に関する法律により自動車の登録申請に際し必要とされているが、車庫証明書申請書の作成、添付書類の収集及び申請書の提出等の代行をさせることも、同様に、自動車の販売に付随する真に必要な範囲の行為として行政書士法第19条第1項に抵触しないと解されるのか。

【回答】
〇 道路運送車両法に基づく自動車登録申請は自動車の所有者が、自動車の保管場所の確保等に関する法律に基づく車庫証明申請は自動車の保有者が、自ら行うものであるから、自動車販売会社による自動車登録申請書及び車庫証明申請書の作成は、「正当業務の遂行上真に必要な範囲内において付随して行う場合」に当たらない。

【申請代行手数料の「報酬」への該当性】

【質問3;自動車販売とあわせて実施する登録代行に係る手数料の報酬性について】
〇 自動車販売会社Aが、販売員甲をして登録申請書及び車庫証明申請書の作成並びに添付書類を収集及び申請書の提出の代行をさせ、法定費用をのぞいた報酬を得ている場合において、以下の①から③の場合、行政書士法第1条の3第1項の「報酬を得て・・・書類の作成」に該当し、同法19条第1 項に違反するのか。

① 行政書士法の規定を遵守するためとして、申請書の作成については無料とし、添付書類の収集及び申請書類の提出等の人件費及び交通費等の実費を登録代行手数料として顧客に明示して料金を徴収している場合

② 書類の作成行為が全体の代行行為に占める割合が極めて少なく、むしろ、添付書類の収集及び申請書の提出の人件費及び交通費等の実費が大部分として見られるが、甲の代行行為全体に対する対価として報酬を得ている場合

③ 登録申請書及び車庫証明申請書の作成は、顧客自身が行い、自動車販売会社は、甲をして添付書類の収集及び申請書の提出の一連の手続を代行させ、これら手続代行の対価として法定費用を除いた報酬を得ている場合

【回答】
〇 一連の作業に対する報酬に、書類の作成に対する報酬が含まれているときは、行政書士法第1条の3第1 項の「報酬」に該当し、行政書士法第19条第1項に違反する。
〇 なお、書類の作成のみならず車両の受取り、搬送等一連の作業の対価として手数料を受領している場合に、これを書類作成につき報酬を得たものと認定し得るか否かは、当該手数料を受領した者の意思のみならず依頼者との契約内容、一連の作業に占める書類作成行為の重要性、受領した手数料の額等を総合的に勘案して個別に判断すべきものである。
・ 具体的には、報酬とは役務に対する対価であるから、印紙・証紙代、用紙代等を補償する実費弁償は、その範囲にとどまる限り、書類の作成に対する報酬に該当しないが、人件費等を含むものは書類の作成に対する報酬に該当する。
・ 書類作成に対する報酬と認定できる場合には、その名目やその額の多寡は問わない。

〇 以上を踏まえ、質問の①~③の場合に、行政書士法第1条の3第1項の報酬に該当するかどうかについては以下のとおり。
【事例①】
・ 契約書や領収証等の書面あるいは口頭で書類の作成(添付書類及びその収集に関する書類の作成を含む)を無料とし、実費を登録代行手数料として顧客に明示して料金を徴収していても、実費に人件費等を含む場合、実質的に申請書の作成に対する報酬に該当する部分が含まれていると認定され、法第1条の3第1項の報酬にあたり、同法第19条第1項に違反する。
【事例②】
・ 書類の作成行為に対する対価を含む代行行為全体に対する対価として得ているのであれば、書類作成部分の全体に占める額の多寡は問わず、法第1条の3第1項の報酬にあたり、同法第19条第1項に違反する。
【事例③】
・ 自動車販売会社Aが、申請書の作成も添付書類及びその収集に関する書類の作成もしていないのであれば、法第1条の3第1項の報酬に該当しない。

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