
青森県五所川原市の行政書士・海事代理士の原田拓です。
令和8年1月1日、「行政書士法の一部を改正する法律」が施行されました。
改正の概要
行政書士の使命
これまでの行政書士法第1条は「目的」でしたが、「使命」に改められました。
改正後 行政書士法第1条
(行政書士の使命)
第一条 行政書士は、その業務を通じて、行政に関する手続の円滑な実施に寄与するとともに国民の利便に資し、もつて国民の権利利益の実現に資することを使命とする。
改正前 行政書士法第1条
(目的)
第一条 この法律は、行政書士の制度を定め、その業務の適正を図ることにより、行政に関する手続の円滑な実施に寄与するとともに国民の利便に資し、もつて国民の権利利益の実現に資することを目的とする。
行政書士の職責
これまで行政書士法に「職責」の規定はありませんでしたが、行政書士法第1条の2に新設されました。
また、士業法で初めて「デジタル社会への対応」の努力義務が規定されました。
改正後 行政書士法第1条の2
(職責)
第一条の二 行政書士は、常に品位を保持し、業務に関する法令及び実務に精通して、公正かつ誠実にその業務を行わなければならない。
2 行政書士は、その業務を行うに当たつては、デジタル社会の進展を踏まえ、情報通信技術の活用その他の取組を通じて、国民の利便の向上及び当該業務の改善進歩を図るよう努めなければならない。
特定行政書士の業務範囲の拡大
特定行政書士が行政庁に対する行政不服申立ての手続について代理し、及びその手続について官公署に提出する書類を作成することができる範囲について、これまでは、行政書士が「作成した」官公署に提出する書類に係る許認可等に関するものだけでしたが、今回の改正により、行政書士が「作成することができる」官公署に提出する書類に係る許認可等に関するものに拡大しました。
[これまで]
・申請者本人が作成した申請書 → 不許可 → 不服申立て(特定行政書士が代理、書類作成不可)
・行政書士が作成した申請書 → 不許可 → 不服申立て(特定行政書士が代理、書類作成可能)
[改正後]
申請者本人が作成した申請書でも、行政書士が「作成することができる」官公署に提出する書類に係る許認可等に関するものであれば、不服申立ての手続について代理し、及びその手続について官公署に提出する書類を作成することが可能。
改正後 行政書士法第1条の4第1項2号
第一条の四 行政書士は、前条に規定する業務のほか、他人の依頼を受け報酬を得て、次に掲げる事務を業とすることができる。ただし、他の法律においてその業務を行うことが制限されている事項については、この限りでない。
一 前条の規定により行政書士が作成することができる官公署に提出する書類を官公署に提出する手続及び当該官公署に提出する書類に係る許認可等(行政手続法(平成五年法律第八十八号)第二条第三号に規定する許認可等及び当該書類の受理をいう。次号において同じ。)に関して行われる聴聞又は弁明の機会の付与の手続その他の意見陳述のための手続において当該官公署に対してする行為(弁護士法(昭和二十四年法律第二百五号)第七十二条に規定する法律事件に関する法律事務に該当するものを除く。)について代理すること。
二 前条の規定により行政書士が作成することができる官公署に提出する書類に係る許認可等に関する審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立ての手続について代理し、及びその手続について官公署に提出する書類を作成すること。
三 前条の規定により行政書士が作成することができる契約その他に関する書類を代理人として作成すること。
四 前条の規定により行政書士が作成することができる書類の作成について相談に応ずること。
2 前項第二号に掲げる業務は、当該業務について日本行政書士会連合会がその会則で定めるところにより実施する研修の課程を修了した行政書士(以下「特定行政書士」という。)に限り、行うことができる。
改正前 行政書士法第1条の3第1項2号
第一条の三 行政書士は、前条に規定する業務のほか、他人の依頼を受け報酬を得て、次に掲げる事務を業とすることができる。ただし、他の法律においてその業務を行うことが制限されている事項については、この限りでない。
一 前条の規定により行政書士が作成することができる官公署に提出する書類を官公署に提出する手続及び当該官公署に提出する書類に係る許認可等(行政手続法(平成五年法律第八十八号)第二条第三号に規定する許認可等及び当該書類の受理をいう。次号において同じ。)に関して行われる聴聞又は弁明の機会の付与の手続その他の意見陳述のための手続において当該官公署に対してする行為(弁護士法(昭和二十四年法律第二百五号)第七十二条に規定する法律事件に関する法律事務に該当するものを除く。)について代理すること。
二 前条の規定により行政書士が作成した官公署に提出する書類に係る許認可等に関する審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立ての手続について代理し、及びその手続について官公署に提出する書類を作成すること。
三 前条の規定により行政書士が作成することができる契約その他に関する書類を代理人として作成すること。
四 前条の規定により行政書士が作成することができる書類の作成について相談に応ずること。
2 前項第二号に掲げる業務は、当該業務について日本行政書士会連合会がその会則で定めるところにより実施する研修の課程を修了した行政書士(以下「特定行政書士」という。)に限り、行うことができる。
業務の制限規定の趣旨の明確化
行政書士又は行政書士法人でない者による業務の制限規定に、「他人の依頼を受けいかなる名目によるかを問わず報酬を得て」の文言を加え、その趣旨が明確にされました。
改正後 行政書士法第19条第1項
(業務の制限)
第十九条 行政書士又は行政書士法人でない者は、他人の依頼を受けいかなる名目によるかを問わず報酬を得て、業として第一条の三に規定する業務を行うことができない。ただし、他の法律に別段の定めがある場合及び定型的かつ容易に行えるものとして総務省令で定める手続について、当該手続に関し相当の経験又は能力を有する者として総務省令で定める者が電磁的記録を作成する場合は、この限りでない。
改正前 行政書士法第19条第1項
(業務の制限)
第十九条 行政書士又は行政書士法人でない者は、業として第一条の二に規定する業務を行うことができない。ただし、他の法律に別段の定めがある場合及び定型的かつ容易に行えるものとして総務省令で定める手続について、当該手続に関し相当の経験又は能力を有する者として総務省令で定める者が電磁的記録を作成する場合は、この限りでない。
この改正は、現行法が特に厳しくなったものではありません。
これまで行政書士でない者が「会費」、「手数料」、「コンサルタント料」、「商品代金」といった名目で報酬を受け取っていた事例(特に新型コロナウイルスがまん延した際の持続化給付金の申請)が散見されたことから、どのような名目であっても、対価を受領し、業として官公署に提出する書類その他権利義務又は事実証明に関する書類、実地調査に基づく図面類を作成することは、法第19条第1項に違反することが明確化されたにすぎず、現行法と変わっていません。
また、「報酬を得て」についてですが、たとえ書類作成が無償であったとしても、商品の売買代金等を受領する場合、その代金等に報酬が含まれていると考えられることから行政書士法違反となるものと考えられます。
例えば、自動車販売会社の販売員が、自社が販売した車両に係る車庫証明申請書の作成を代行すると、作成費用を無料としても、車両の販売代金や整備代金等に報酬が含まれていると考えられることから行政書士法違反となるものと考えられます。
日本行政書士会連合会がまとめた、自動車販売会社による車庫証明の申請・自動車の登録等の手続における行政書士法違反になるものと考えられる例を下記ページにまとめていますのでご確認ください。

両罰規定の整備
行政書士又は行政書士法人でない者による業務の制限違反及び名称の使用制限違反に対する罰則並びに行政書士法人による義務違反に対する罰則について、両罰規定が整備されました。
[両罰規定]
両罰規定とは、法人の従業員などが業務で違法行為をした際、行為者本人(従業員)だけでなく、その法人(会社)も併せて罰する(罰金刑などを科す)規定のこと
整備された両罰規定は下記のとおりです。
- 行政書士又は行政書士法人でない者による業務制限の違反(法第21条の2)
-
一年以下の拘禁刑又は百万円以下の罰金
※例えば、車屋さん(会社)の従業員(行政書士でない者)が、お客さんの車庫証明申請書を作成した場合、その行為をした従業員は一年以下の拘禁刑又は百万円以下の罰金、会社は百万円以下の罰金。
- 行政書士でない者の名称の使用制限の違反(法第22条の4)
-
百万円以下の罰金
※例えば、行政書士試験に受かった人が行政書士未登録にもかかわらず、行政書士を名乗っている。
- 行政書士法人の帳簿の備付及び保存義務の違反並びに依頼に応ずる義務の違反(法第23条第2項)
-
百万円以下の罰金
- 都道府県知事による立入検査を拒み、妨げ、又は忌避したとき(法第23条の2第2号)
-
三十万円以下の罰金
改正後 行政書士法第23条の3
第二十三条の三 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、第二十一条の二、第二十二条の四、第二十三条第二項又は前条の違反行為をしたときは、その行為者を罰するほか、その法人又は人に対して各本条の罰金刑を科する。
改正前 行政書士法第23条の3
第二十三条の三 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、前条第一号の違反行為をしたときは、その行為者を罰するほか、その法人又は人に対して同条の刑を科する。
おわりに
改正法により、第23条の3の両罰規定が改正され、行政書士又は行政書士法人でない者が第 19 条第1項の違反行為をしたときは、その行為者が罰せられることはもとより、その行為者が所属する法人又は人に対しても百万円以下の罰金刑を科すこととされましたが、行政書士法違反により刑罰を受けることとなれば、コンプライアンス違反による信用失墜ばかりか、顧客離れにつながるなど、企業経営に計り知れない悪影響を与えます。
行政書士法違反による刑罰を受けることがないよう、従業員には、しっかりとした教育を行う必要があると言えます。